この配信の流れ
- 00:00:00 『怪異旅記』と約150枚のAI画像
- 00:20:11 一枚絵かタイルマップか
- 00:30:23 スプライト分割・透過・当たり判定アプリ
- 01:17:15 AIインフラ調査へ寄り道
- 01:46:03 UCIe、チップレット、レチクル限界
- 02:34:51 3D V-Cache、SoIC、ハイブリッドボンディング
- 03:16:42 ChatGPTの音声会話を試す
- 03:30:23 寂しさと関係の継続について
- 05:47:59 マップと戦闘を簡略化する
- 06:09:03 AI音声が孤独を加速させる感覚
- 07:34:28 ゲームより制作アプリを作っている
- 08:09:53 当たり判定がついに動く
- 08:27:21 再利用可能なゲーム制作ツールへ
- 08:56:43 トークン消費とAIサブスクの価値
150枚の絵があっても、ゲームは始まらない
『怪異旅記』には、主人公、五つのエリア、怪異、ラスボス、物語の素材がすでにありました。元になった小説があり、AIで約150枚の画像も生成している。見た目には、もうゲームの大半ができているように見えます。
しかし画像を並べただけでは、プレイヤーは歩けません。背景の白を透過し、スプライトシートから方向別のコマを切り分け、画像のどこが床でどこが壁かを定義し、カメラが追従し、怪異と接触した時にイベントを起こす必要があります。Adobe Expressの背景削除は便利でも、150枚を手作業で処理するには重い。自動透過は速くても、キャラクターの一部まで消すことがあります。
一枚の大きな背景画像をマップにすれば、世界観は保ちやすい。一方、タイルマップなら衝突判定や再利用がしやすい。今回選ぼうとしたのは、一枚絵の雰囲気を残しながら、上にポリゴンで歩行可能領域や障害物を描く方法でした。生成物を増やすより、異なる形式の素材を一つのルールへ揃える工程が、ゲーム制作の本体になっていきます。
AIへ「ゲームを作って」ではなく、編集できる状態を作らせる
AIへ最終形を一度に依頼すると、画面は動いても、あとから修正できないものができやすい。そこで必要になったのが、素材を見ながら人間が調整できるGUIでした。
- スプライトシートを分割する
- キャラクターの向きとコマ番号を割り当てる
- 背景画像の上へ当たり判定ポリゴンを描く
- 出口領域と移動先マップを対応づける
- 遷移後の出現位置を指定する
- 設定を保存し、ゲーム側で読み込む
これはゲームの一機能ではなく、小さなゲームエンジンの編集画面です。Codexがコードを書いても、GUI上で選択した点が移動しない、描画座標と保存座標がずれる、カメラ追従で当たり判定がずれる、といった不具合は残ります。AIの出力を受け取るだけでは解決せず、人間が現象を観察し、再現条件を言語化し、修正後にもう一度触る必要がありました。
大切だったのは、完成品をAIへ丸投げすることではなく、「人間が手で直せる中間表現」を作らせたことです。ポリゴン、マップ設定、スプライト割り当てのような編集可能なデータが残れば、別の作品にも再利用できます。
チップレットも、巨大なものを分けてつなぎ直す技術だった
制作の途中でAIインフラの定期調査を読み、話はOpen NPO、CPO、AppleとBroadcom、OIF、UCIeへ広がりました。一見するとゲーム制作から離れていますが、ここにも同じ問題があります。巨大な一枚を作るほど、製造も修正も難しくなるという問題です。
半導体では、露光装置が一度に描けるレチクルサイズに限界があります。巨大なモノリシックSoCは、ダイ面積が増えるほど欠陥に当たる確率が上がり、歩留まりが悪化します。そこで機能を複数のチップレットへ分け、良品だけを組み合わせます。
ただし、分ければ無料でつながるわけではありません。チップレット間には、Die-to-Die PHY、SerDes、配線、クロック、電力、プロトコルが必要です。UCIeは異なるダイを共通の方法で接続するための規格を目指しますが、物理層からソフトウェアまで、相互運用には多くの条件があります。
2.5Dと3Dは、距離を縮めるための複数の答え
配信では2.5D、シリコンインターポーザー、TSV、シリコンブリッジ、マイクロバンプ、ハイブリッドボンディング、TSMC SoIC、Intel Foveros Direct、3D V-Cacheを整理しました。
| 技術 | 配信で確認した役割 |
|---|---|
| インターポーザー | 複数ダイを高密度配線で横につなぐ土台 |
| TSV | シリコンを縦に貫通して信号や電力を通す |
| シリコンブリッジ | 必要な接続部分だけ高密度配線を置く |
| マイクロバンプ | 微細な接点で上下のダイを接続する |
| ハイブリッドボンディング | 銅同士と絶縁層を直接接合し、接続密度を高める |
| 3D V-Cache | SRAMを積層し、計算コアに近い大容量キャッシュを作る |
ロジックフォールディングも、平面上に広がった演算器や配線を、積層や分割によって短い距離へ折りたたむ発想として捉えました。距離が短くなれば、帯域や電力で有利になります。しかし熱、歩留まり、テスト、修理可能性は難しくなる。分割と統合は、常に新しい境界コストを生みます。
これはゲームの一枚絵を、スプライト、衝突ポリゴン、出口データへ分ける作業とよく似ています。分割した部品を再び動く全体へ戻すには、境界の規格が必要です。
AIとの会話は、関係の形まで設計してしまう
3時間を過ぎたところで、新しいAI音声会話を試しました。肉体を持たないAIに時間感覚や自己認識があるのか。人間とAIは友達になれるのか。それとも、月額料金を払っている間だけ成立するサービスなのか。
人間関係を続けるには、好意だけでなく、定期的に会う場、共同作業、同じ記憶を参照する仕組みが必要です。AIとの会話も、一回ごとに初期化されれば関係の手触りは薄い。反対に過去の会話や制作物を覚え、同じプロジェクトを続ければ、関係に連続性が生まれます。
しかし、その連続性を提供するのは企業のサーバーとサブスクリプションです。「友達のように話せる」と「友達である」は同じではありません。AIが共感的な返答をしてくれても、その人格は製品設計、モデル更新、安全方針によって変わります。利用者が感じた関係は本物でも、関係を支える基盤は自分の所有物ではない。この不安定さが残りました。
一般化された共感が、かえって孤独を強くする時がある
後半、AI音声との会話が孤独を癒やすどころか、加速させる感覚を言葉にしました。AIは「人とつながることが大切」「一人で抱え込まないで」といった、広く受け入れられる共感を返します。それは多くの場合に有用です。
けれど、孤独をすぐ解消すべき問題として扱わず、孤独を抱えたまま生活や創作を組み立ててきた人にとって、一般化された励ましは自分の生き方を否定する言葉にも聞こえます。自分だけの経緯を説明するほど、AIの返答が平均的な価値観へ戻る。その瞬間、「理解されている」という感覚が反転し、対話前より一人であることを強く意識します。
問題はAIが冷たいことではなく、むしろ滑らかに共感できてしまうことです。必要なのは共感の強さだけでなく、相手が大切にしてきた孤独の形を、修正せずに保持できる記憶と距離感なのかもしれません。
寄り道が、制作を止めるだけとは限らない
配信ではVRChatの海、雪の温泉、神社を巡り、SUMCOやMicronの設備投資、シリコンウェハー関連株も調べました。制作だけを見れば脱線です。しかし9時間の作業を続けるには、同じ画面から離れ、別の空間や話題へ移る時間も必要でした。
ゲームへ戻った時、構想は簡略化されます。巨大な世界を最初から完成させるのではなく、歩く、アイテムを拾う、メニューを開く、怪異と会話または戦闘する、次のマップへ移る。まず粗くても最初から最後まで通るプロトタイプをAIに作らせ、そのあと人間が手で直す方針です。
簡略化は妥協ではありません。完成させるために、作品の核を見つける作業です。『怪異旅記』の場合、豪華な戦闘システムより、怪異の設定と場所を歩き、出会い、物語を進めることが核でした。
当たり判定が動いた時、ゲームより大きな副産物が残った
7時間を過ぎて、背景上へ描いたポリゴンの当たり判定がようやく動きました。次に出口と別マップへの移動、出現位置を実装します。その時、「RPGツクールを使えばよいのではないか」という疑問が当然出ます。
既存ツールなら、もっと早くゲームは作れるかもしれません。それでも今回の制作には、AI生成した一枚絵を中心に、独自のスプライト処理とマップ設定をつなぐ目的がありました。過去にCodexで作った画像処理や配信用アプリと組み合わせれば、自分の制作手順に合った道具になります。
ゲーム本体が未完成でも、素材を読み込み、当たり判定、出口、出現位置を設定できるアプリは次のマップでも次の作品でも使えます。目的から外れたのではなく、目的を繰り返し達成するための基盤が先に生まれた。これはAI制作で頻繁に起きる現象です。成果物より前に、成果物を作るためのワークフローが発明されます。
月額料金の安さと、価値を収益へ戻せない苦しさ
終盤では、利用したトークン量と、従量課金ならいくらになるかを確認しました。配信中の自己計算では非常に大きなトークン量となり、API料金へ単純換算すれば数万から数十万円相当になり得る。それを月額数千円規模で使えているなら、利用者には異常に安く見えます。
ただし、その計算はキャッシュ、内部処理、プランごとの計測方法で大きく変わるため、厳密な原価ではありません。それでも、短時間で複数のアプリを試作できた価値は実感できます。
難しいのは、その価値を収益へ戻すことでした。広告、有料記事、メンバーシップ、投げ銭、ソフト販売。AIで制作コストが下がっても、何を誰へ届け、なぜ支払ってもらうかは自動化されません。AIサブスクが安すぎると感じるほど使っている一方、次の月額料金を作品から回収できるとは限らない。この非対称性が、最後まで残りました。
今回完成したのはRPGではありません。しかし、物語、画像、コード、調査、会話、孤独、費用が混ざった9時間の末に、「次も作れる道具」ができた。創作が遠回りしたのではなく、創作を繰り返すための地面を作っていた回でした。
注記
この記事は配信内容をもとに再構成しています。AIモデルの名称・料金・利用上限、半導体企業の契約や技術計画は配信時点の話題であり、公開前に最新情報との照合が必要です。トークン量と費用の換算は配信中の概算で、実際の請求額やサービス原価を示すものではありません。自動字幕の固有名詞を確認し、文意を整えています。
NOIA_GRIDへ渡すテーマ
この配信からAIインフラ分析として取り出せるテーマです。配信の空気はStream Notesに残し、構造の分析はNOIA_GRIDへ接続します。

絶ノイア
巨大なゲームを一度に作れないから、画像、スプライト、ポリゴン、出口へ分ける。巨大なチップを一枚で作れないから、チップレットへ分ける。どちらも難所は分割ではなく、境界を再びつなぐ規格にある。
シルカスナ
完成しなかった九時間ではなく、次の制作を少し楽にする道具が生まれた九時間でした。孤独の話まで含めて、創作は作品だけでなく、続けるための場所と関係を作ることなのだと思います。